
ブラジル人の彼氏・彼女がいる方や、ブラジル人の配偶者と生活している方から、よくこんな言葉を聞きます。
「日本語も英語もある程度話してくれるから、会話はできる。でも、なんか大事なところが伝わっていない気がする」
この感覚、実は正しいです。そこで今回は「伝わっていない気がする」の正体を説明します。
言語が変わると、人も変わる
ブラジル人に限らず人は母国語で話すとき、まったく違う表情を見せます。ユーモアのセンス、感情の機微、冗談のタイミング。無理な努力をしなくても言葉がスラスラ出て来るので表現の幅が広くなります。
一方、外国語で話すとき人は、いわば「制限されたモード」で話しています。語彙も表現も自分が使える範囲に限定され、本当に言いたいことの一部しか出せていない状態が続きます。
これは日本人にも全く同じことが言えるでしょう。自分が外国語を話しているとき性格やキャラが変わることに気づきますか? 日本語だと陽気でフレンドリーなはずなのに外国語を話すときは萎縮してしまったり、閉鎖的になったり、やけに真面目になったり。あるいはその逆もあるでしょう。
ブラジル人も同じで、やっぱりポルトガル語で話すようになるとより自分らしくなり、より本音で言いたいことを言いたいように言えるのです。笑いたいときに笑いを取れる。感情をそのまま言葉にできる。この違いは大きいです。
「なんか大事なところが伝わっていない気がする」というのは、相手がまだ制限されたモードで話しているからなんです。その壁を越えるには、こちらがポルトガル語で話せるようになるしかありません。あるいは相手が日本語を上手になるしかないでしょう。
翻訳アプリやAIでは届かない場面がある
翻訳アプリやAIは便利です。単語の意味を調べる、看板を読む、自分の言いたいことを外国語に変換してもらう——実際様々な用途に使えます。
でも、パートナーの家族に初めて会う日にスマホを取り出しますか?感情的な会話——喧嘩、和解、大切な気持ちの告白——こういう場面でいちいちアプリを挟みますか?アプリを挟むと、伝わるはずのものが伝わらなくなります。翻訳を待つ間に感情の温度が下がる。文字に変換された言葉からは、声のトーンも表情も失われる。
パートナーが何かに怒っている。悲しんでいる。伝えたいことがある。そのとき、アプリに打ち込む作業が間に入ることで、会話ではなく「情報のやりとり」になってしまうのです。
そうなんです。自分の言葉で話すことが、関係の深さをつくるのです。言葉は単なる情報伝達の手段ではなく、関係そのものだからです。だからもうアプリやAIに頼るのはやめましょう。
ポルトガル語を学ぶことで変わること

ポルトガル語が話せるようになると、具体的にどう変わるか。
パートナーの冗談が分かるようになります。ブラジル人のユーモアは独特で、言葉のニュアンスに依存することが多いです。翻訳してもらっても面白くないことが、ポルトガル語で聞くと笑えるようになります。
パートナーの家族との会話に入れるようになります。食卓で何が話されているか分かるようになる。自分の話を家族に直接できる。「パートナーの家族」から「自分の家族」になっていく感覚です。
なによりパートナーの人柄がもっとよく分かるようになります。ポルトガル語で話すパートナーは、日本語や英語で話すパートナーとは違う一面を見せます。本来の姿に近い部分が出てくる。それを見られるのは、ポルトガル語で話せるようになった人だけです。
「下手でいい」という考え方
ブラジルに20年以上住んでいて、確信していることがあります。
ブラジル人は、外国人が下手でも自分たちの言葉で話してくれることを、上手に話せることと同じくらい、あるいはそれ以上に喜びます。
完璧な発音でなくていい。文法が多少間違っていてもいい。「この人は私の言葉で話しようとしてくれている」という姿勢が、相手の心を動かします。
むしろ、間違えながら話す外国人を、ブラジル人は温かく迎えます。笑いが起きるとしたら、それはからかいではなく、一緒に楽しんでいる笑いです。
最初から上手く話せる必要はありません。「下手でも話す」ことから始めてください。ポルトガル語を学ぶのは、試験のためでも義務でもありません。大切な人と、もっと深く繋がるためです。その動機がある限り、必ず続けられます。そして続けた分だけ、相手との関係は確実に変わっていきますよ。



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